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小児矯正は出っ歯の治療にも効果的!治療方法や期間について




「出っ歯で口がうまく閉じられない」「少しの出っ歯でも治療した方がいいのだろうか」など、お子さまの出っ歯に関してお悩みの方はいませんか?

「出っ歯」といってもその程度はさまざまで、治療に迷う方も多いでしょう。ここでは、出っ歯の影響や矯正するメリット、矯正方法などについてご紹介します。

出っ歯でお悩みの方は、この記事を参考に歯科矯正を検討してみてください。


出っ歯とは?原因と症状

出っ歯は、正式には「上顎前突」と呼びます。

上の前歯や上顎が、下の歯に比べて前に出ている状態のことです。前歯が下の歯に比べて6mm以上前に出ていると、「治療の対象となる出っ歯」だといえます。


出っ歯の原因

出っ歯は、生まれつきの要因のほか、習慣とも関連があります。


<生まれつきの要因>

  • 上顎が小さく、収まりきらずに前歯が出ている

  • 下顎が小さく、相対的に上顎が大きいために前歯が出ている

  • 上顎が前に出ている

  • 下顎が後ろに下がっている


<習慣による要因>

  • 指しゃぶり

  • 舌を前歯に押し付ける癖(舌突出癖)

  • 下唇をかむ癖

  • 口呼吸

子どものうちは、あごや骨が成長途中で柔らかいです。そのため、指しゃぶりなどの習慣によって歯が前に動き、出っ歯になってしまうことがあります。



出っ歯の影響

出っ歯によって、どのような影響があるのでしょうか。

お子さまの場合、転んだり、ボール遊びをしたりなどで前歯をぶつける機会が多いです。出っ歯は、歯が前に出ている分ぶつけやすいため、折れたり欠けたりする原因になってしまいます。

また、口呼吸が出っ歯の原因の1つだとお伝えしましたが、口呼吸によって口内が乾燥すると細菌が繁殖しやすい環境となり、虫歯になりやすくなるとわかっています。噛み合わせがよくないために咀嚼力が弱まったり、発音がうまくできなくなったりする可能性も少なくありません。


こうした悪影響を減らすため、早いうちからの矯正治療をおすすめしています。




出っ歯に対する小児歯科矯正の効果

出っ歯の矯正治療をおこなうメリットをご紹介します。



虫歯や歯周病などお口のトラブルを減らせる

出っ歯を矯正して口内乾燥を改善することで、唾液による自浄作用(食べかすを流したり、菌を殺したりする作用)をしっかり働かせることができます。虫歯や歯周病の原因菌が過剰に増殖するのを抑え、健康的な歯を維持しやすくなるでしょう。

また、歯並びがよくなることでブラッシングが十分におこなえるようになることも、お口のトラブル減少に効果的です。



しっかり咀嚼できる

前歯の噛み合わせは、咀嚼する力に影響します。咀嚼には奥歯を使う、と思っている方も多いですが、前歯には「食べ物を噛み切る」という大切な働きがあります。

前歯をうまく使うことができなければ奥歯にばかり負担がかかってしまい、奥歯がすり減る原因になるかもしれません。噛む力が不十分だと、顎の発達が遅れ、歯並びや噛み合わせに影響がでることもあります。



横顔がきれいに整う

口呼吸が原因で出っ歯になっている方は、下顎がしっかり発達しないことが多く、横から見たときに下顎が引っ込んでいることがあります。下顎が小さいと、相対的に出っ歯もより目立つようになり、コンプレックスだと感じる方も少なくありません。

小さなうちから出っ歯の矯正治療をすることで、下顎もしっかり発達させることができ、きれいな横顔をつくることができます。


小児矯正治療のタイミングと期間

小児の矯正治療をする時期としては、2パターンあります。一般的には、大人になってからの矯正治療よりも短い期間で済むことが多いです。


一期治療:5〜6歳ごろ

一期治療は、乳歯が抜け始めたころから始めます。まだあごや骨がやわらかいため、骨格からきれいに整えていくことが可能です。あごの小さい方、出っ歯や受け口など骨格のずれがある方は一期治療がおすすめされます。歯の生え変わりがすすんでしまうと一期治療がおこなえませんので、出っ歯などでお悩みであれば早めにご相談ください。


治療期間の目安は1〜2年です。


二期治療:12歳ごろ

二期治療は、乳歯がすべて永久歯に生え変わってから始めます。歯並びをととのえ、噛み合わせを調整するのが目的です。

一期治療をおこなえば、二期治療が不要になるというわけではありません。個人個人の状態をみての判断が必要です。一期治療であごをしっかり広げておくと、二期治療で抜歯をする可能性が低くなります。


治療期間の目安は2〜3年です。


矯正装置の種類

子ども用の矯正装置は、外せないタイプ(固定式装置)と外せるタイプ(可撤式装置)に大まかに分けられます。これらは1種類だけ使うのではなく、数種類組み合わせて使用することも多いです。個人個人の状態に合わせ、適切な装置を選びます。


固定式装置

外せないタイプの固定式装置について、種類や特徴をご紹介します。

装置の名称

目的

特徴

急速拡大装置

上顎を広げる。

3か月程度の短期間で矯正でき、その後は後戻り防止のために半年程度装着を続ける。

痛みや違和感が出やすい。

マルチブラケット装置

ワイヤーの力で歯並びを整える。

大人の歯科矯正でもよく用いられるスタンダードな矯正方法。

装置の形状が複雑なので、歯磨きが難しくなる。


可撤式装置

外せるタイプの可撤式装置について、種類や特徴をご紹介します。

装置の名称

目的

特徴

ヘッドギア

上顎の成長を抑え、前歯が前に出ないようにする。上顎の奥歯をうしろへ移動させる。

目安として1日10時間以上装着する必要がある。頭や首に装置をつけるので、外出時につけられない。

床矯正装置

ネジやバネの力を使って歯を動かし、顎の成長を促す。

目安として1日14時間以上装着する必要がある。細かな歯並びの調整は難しい。

顎を成長させるので、抜歯せずきれいに歯を並べられる可能性が高まる。

バイオネーター

下顎の成長を促して上顎とのバランスを取る。

目安として1日10時間以上装着する必要がある。成長期の子どもにしか使用できない。

矯正後の後戻りが少ない方法。

アクチバトール(FKO)

上顎の成長を抑え、下顎の成長を促して上顎とのバランスを取る。

目安として1日10時間以上装着する必要がある。

保定装置としても使用できる。

フレンケル

口周りの筋肉による圧力を取り除き、顎の成長を促す。

目安として1日10時間以上装着する必要がある。

装置が大きめなので、うまく口を閉じられない。慣れるまで時間がかかる。

「低舌位」の改善にもつながる。



小児矯正治療の費用と保険適用条件

歯科矯正は、基本的には健康保険が使えないため、自費での治療になります。

各クリニックによって料金設定は異なりますが、目安としては一期治療で20〜30万円、二期治療で30〜50万円、二期に分けずに永久歯全体の矯正をする場合で40〜100万円ほどかかることが多いでしょう。

ただし、以下のような方は、保険適用で歯科矯正をおこなえます。

  • 手術を要する顎変形症

  • 唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)

  • 成長ホルモン分泌不全性低身長症

  • ダウン症候群

  • ターナー症候群

  • マルファン症候群

  • 脊髄性筋萎縮症

  • 先天性ミオパチー

  • 小舌症

  • 前歯および小臼歯の永久歯のうち、3歯以上の萌出不全による咬合異常

保険適用で歯科矯正をおこなえる疾患は、厚生労働省によって現在60種類定められています。保険適用での矯正治療は、どのクリニックでもおこなえるわけではありません。地方厚生局のホームページから指定医療機関を検索できますので、ご確認ください。


自費の場合でも、お子さまの歯科矯正費用は、医療費控除の対象になります。確定申告をおこなうことで所得税から控除されますので、忘れずに手続きしましょう。大人の審美目的の歯科矯正治療の場合は、医療費控除の対象になりません。



治療中のケアと注意点

矯正治療をうまく進めるためには、患者さまの協力が不可欠です。日常的なケアについて、矯正治療の注意点についてお伝えします。



指示された通りの時間、装置を装着します。

取り外しのできる可撤式装置は、指示された通りの時間きちんと装着していなければ、十分な効果が得られません。しかし、お子さまが小さいと、違和感が気になって治療に協力してもらえないこともあります。治療を始める前に、お子さまと十分に話し合っておきましょう。



指示された通りの間隔で通院します。

適切な間隔で歯にかける力を変えることが大切です。力の調節のため、きちんと通院間隔を守りましょう。



きちんと歯磨きをおこないましょう。

取り外せない固定式装置の場合、歯磨きが難しくなります。虫歯や歯肉炎の原因になってしまうので、丁寧に歯磨きをおこないましょう。通常の歯ブラシのほか、隙間を磨くのに適したブラシなどもありますので、クリニックで歯磨きの指導を受けてください。


早く始めれば早く終わるわけではありません。

よくある歯科矯正の誤解なのですが、「早い年齢で始めれば、必ず早く治療が終わる」というわけではありません。矯正の適切な時期は、個人個人の骨格や歯並び、治療に協力できるかどうかなどの要因によって異なります。一期治療で顎を大きく広げたあと、二期治療で細かく歯並びを調整するということも多いです。

そして、治療にかかる期間も目安としてお伝えはしましたが、それより長くかかることもあります。焦らず、じっくり取り組むことが大切です。



治療後のリテンション

矯正治療が終われば、すぐに通院が不要になるというわけではありません。

きれいな歯並びを維持するためには、しばらくの間「リテンション(保定)」が必要です。


動かしたあとの歯は、元の位置に戻ろうとする性質があります。この性質は「後戻り」と呼ばれ、矯正装置を外した直後に起こりやすいです。時間が経つにつれて段々と後戻りしにくくなっていきます。

後戻りしにくい時期になるまでは、保定専用の装置を使って歯の位置を固定させます。装置を使わず自然に経過を見る場合もありますが、多くの方は保定装置が必要です。



 


参考サイト

・公益社団法人 日本矯正歯科学会. 矯正歯科治療について


・公益社団法人 日本矯正歯科学会. 矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは


・公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会. 矯正歯科治療について


・矯正歯科ネット. 出っ歯の歯列矯正!かかる治療期間は?歯列矯正の方法は?


・歯医者に聞きたいわかりやすい矯正歯科治療. 五十嵐 一吉 著. 一般財団法人 口腔保健協会

・写真でわかる子どもの矯正治療ガイド -お子さんの口の中、こうなっていませんか?- 石川 基 著. 医歯薬出版株式会社



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